悠仁さま10歳 秋篠宮家の子育て

文藝春秋2016年10月号
悠仁さま10歳 秋篠宮家の子育て
江森敬冶(毎日新聞編集委員)

秋篠宮家の長男・悠仁さまは、9月6日の誕生日で十歳になった。
秋篠宮さま(50)が昭和40年11月に生まれて以来、皇室には久しく男子皇族が生まれなかった。
平成18年9月6日の悠仁さまの誕生は、皇室にとっては41年ぶりの男子誕生となり、それだけに多くの国民は喜びに沸いた。
生まれた年の暮れの記者会見で天皇陛下は、「初めて会った時には立派な新生児だと感じました。(略)
また、大勢の人々が悠仁の誕生を祝ってくれたことも心に残ることでした」と、喜びを語った。
悠仁さまは、平成22年4月、東京都文京区にあるお茶の水女子大附属幼稚園に入園し、
平成25年4月には、幼稚園の隣にあるお茶の水女子大附属小学校に入学した。
現在は、四年生だ。元気に学校生活を送り、休み時間も放課後遊びも、寒いときでも暑いときでも、校庭で友達と楽しんで遊んでいるようだ。
昨年秋の記者会見で紀子さま(50)は、悠仁さまの近況について、
「興味を持っているものの一つに文字があります。旅行先などで地図を見るのが好きで、書かれている漢字の地名や、
調べ学習で使う漢字辞書に載っている旧漢字を覚えることもあります。また、世界の文字の絵本を見ながら、まねて書いたりもします。
このように長男は、知らない文字が分かるようになり、書けるようになることが面白いようです」と、説明。
さらに、早めに行動するように心掛けるようになり、登校時間を余裕を持って守ろうとしているなど、悠仁さまの成長ぶりを語った。
また、悠仁さまは、今年5月には、サツマイモ植えをした。この行事は、上級生として低学年の世話をしながらの活動だった。
農園の人からサツマイモの苗植えの説明を聞いた後、三年生に教えながら、一緒に苗植えをし、楽しく過ごしたようだ。
5月の下旬に催された学校の運動会では、四年生だけが参加する「台風の目」をはじめ、いろいろな競技に参加し、
友達と一緒に練習した成果を存分に発揮したようだ。
このほかにも、悠仁さまは、学校の遠足で高尾山にも登ったと聞いている。

受験準備を始める友達も
二人の姉の眞子さま(24)や佳子さま(21)が小学生のときも同様だが、紀子さまは悠仁さまに対しても、生活の中で関心を持っていることを温かく見守り、
様々な経験を重ねていくことを大事にしているように見える。
科学博物館や美術館に出掛けたり、ワークショップに参加したりして、紀子さまは悠仁さまと一緒に、科学の不思議な世界を楽しみ、考え、
そして理解を深める時間、あるいは、創りだす喜びの時間を持っているようだ。
私が初めて、秋篠宮さまに会ったのは、宮さまが紀子さまと結婚した翌年の平成3年2月のことだ。
以来、個人的な宮さまとのお付き合いは続き、今年で25年となる。
今年に入って、私は、宮さまに小学校時代の様子を伺ったことがある。
学習院初等科の高学年の頃は、日本の歴史にとても関心があったという。
その時、話題が、悠仁さまの進路に及んだ。お茶の水女子附属小学校は男女共学だ。
女子は、附属の高校まで進学できる。しかし、男子は、附属中学までは進学できるが、高校へは進めず、高校入学時に他校を受験しなければならない。
こうしたことから、多くの男子が小学校六年生で、国立や私立などの中学校を受験することになる。
小学校四年生の悠仁さまの周囲でも、男友達が進学塾に通い始めるなど、受験準備を始めているらしい。
受験の準備をしている友達もいれば、そうでない友達もいる。
悠仁さまも、まさに今、そのままお茶の水女子大附属中学校に進学するか、それ以外の中学校受験をするかどうかの大切な岐路に立っているのだ。
学校生活では、学年が上がるごとに、するべき事が増え、その質も求められていく。
そして、その学年で学習することをしっかりと身につけられるように、復習もより大事になってくると、紀子さまは考えているようだ。
私は、既に両親が、悠仁さまが進んでほしい特定の学校や大学を想定しているのだと思っていた。
しかし、両親の話を聞くうちに、この先、どの学校に行って学ぶのがよいかというような具体的な考えは、まだ、持っているようには感じられなかった。
悠仁さまが四年生から五年生へと進み、学校生活を送る中で、いろいろと考えを深め、
家族とし話し合いながら、自分の将来をじっくりと考え、決めていくのであろう。


 遠くより我妹(わぎも)の姿目にしたるまごの声の高く聞え来(く)

「虫捕りに来し悠仁に会ひて」とある平成22年の天皇陛下(82)の和歌だ。
夏、幼い悠仁さまが、昆虫採集のため、両陛下の住まいである皇居・御所を訪れた。
その際、遠くから、皇后さま(81)の姿を見つけてて喜び、その声が聞こえてくるという大意らしい。
祖母と孫とのほのぼのとした交流の場面が鮮やかに目に浮かんでくる。
平成20年11月の記者会見で紀子さまは、
「夏ごろからでしょうか、庭にいる小さな虫、バッタやカマキリなどを見つけて上手に捕まえて、
手で持ったり、また袖に乗せたりしてよく観察しておりました」と、昆虫に興味を持ちだした頃の悠仁さまを紹介している。
「夏ごろ」と言うから、平成20年夏で、おそらく悠仁さまは、一歳末の頃から、虫に興味を持ち始めたらしい。
平成21年秋には、秋篠宮さまが「結構虫に興味が出てきまして、庭でカブトムシを見つけたり、カマキリを見つけたりして、
それを毎日何回か眺めるというか、一緒に遊ぶことを楽しみにしているようでした」と、興味が高じてきた様子を語っている。
以来、「昆虫博士」「昆虫ハンター」としての悠仁さまの歩みは、今も続いている。
先日、宮さまに聞くと「昆虫への興味は、今でも相当ありますよ。採集するため、あちこちに出掛けています」と、即答した。
「あちこち」というのは皇居・御所や赤坂御用地だけでなく、他の場所へも足を運んでいるらしい。
今夏も、夏休みを利用して悠仁さまは両親たちと、山形県遊佐町やにいがた津南町に出かけ、宿泊した。
津南町の「農と縄文の体験実習館 なじょもん」を訪れた悠仁さまは、修復された本物の縄文式土器に触れ、
その大きさや縄目の模様などを興味深く観察していた。ジオパークの企画展では、動物の角や歯にも触れ、
生き物の種類によって様々な違いがあることに気づいたようである。屋外では、火おこし体験や復元された
竪穴式住居の中で、土器作りを体験した。土器作りは、長い時間をかけ、集中して熱心に取り組んだと聞いている。
この滞在中も、苗場山麓の豊かな自然に触れ、昆虫採集も楽しんだらしい。
「どうして、悠仁さまは虫がお好きなのでしょうか?」。私が、こう聞いたところ宮さまからは
「何故、好きなのか理由は分かりません。子供は昆虫が好きでしょう」との答えが返ってきた。

一番関心があるのはトンボ
実は、宮さまも小さい頃、昆虫が大好きだった。
天皇一家は、皇太子時代に、赤坂御用地にある東宮御所に住んでいた。
御用地の林に、陛下が考案された手製の虫捕り装置を置いていた。
それは誘蛾灯に集まってきた虫が、その下にあるじょうご状の管を通って虫カゴの中に集まる仕組みだった。
夏の日の朝、宮さまは妹の黒田清子さん(47)を連れて、採集した昆虫を見に行くのが楽しみだったそうだ。
二人は、一緒に御用地で虫捕りに出かけた。しかし、昆虫を捕り損なった清子さんをしばしば宮さまが叱るので、
清子さんは宮さまとの昆虫採集は、「とても怖かった」と、後々まで話していたという。
昆虫の中でも悠仁さまは、トンボとチョウチョが好きらしい。
「でも今、一番、関心のあるのはトンボでしょうね」と、宮さまは話す。
悠仁さまは、御用地内の水田にメダカやヤゴを放し、トンボなどの好む生息空間(ビオトープ)を作っている。
昨年の会見で紀子さまは、「長男は、以前からの興味が更に広がり、また、新たな興味も加わってきました。
田んぼの生き物などにも興味を持つようになり、(略) 今まで興味を持っていました昆虫の採集や飼育をするだけではなく、(略)
生き物が暮らす環境にも関心を向けています。例えば、トンボやホタルなどが棲みやすい場所、好む環境を作りたいと、
自分の家の庭や御用地内を歩いて植生などを確かめ、また、小川のところでは、水の流れを止めないように枯れ葉や小さな枝を取り除いています」と、
この辺りの事情を紹介している。
学校生活だけでなく、日々の暮らしの中でも、成長しつつある悠仁さま。
宮さまによると、悠仁さまは、自分たちが住む赤坂御用地に生息するトンボと皇居にいるトンボとではどう違うのか、すごく関心があるという。
種類は、大半同じだろうが、もし、皇居にいないトンボが赤坂御用地に生息していたら、それはそれでおもしろいデータになると宮さまは話す。
「ところで、皇居や赤坂御用地にはどのような種類のトンボが生息しているのでしょうか?」と、門外漢の私は素直に疑問を投げかけてみた。
しかし、宮さまは、「息子に何度か説明を受けましたが、私自身、よくトンボの区別がつきません。
魚類だったらある程度、理解できるのですが、虫はね。正直、私はよく分かりません」と、あっさり白旗をあげた。
昆虫の知識については、悠仁さまは父親を超えたらしい。

二人の姉は、悠仁さまにとって、とても頼りになる存在だ。
眞子さまは、幼稚園から高校まで学習院で学んだ後、東京都三鷹市にある国際基督教大学(ICU)に進学。
卒業後は、英国のレスター大学大学院博物館学研究科を修了したが、9月からは国際基督教大学大学院博士後期課程で勉強する。
現在は、日本工芸会総裁や東京大学総合研究博物館の特任研究員なども務めている。
佳子さまは、幼稚園から高校まで学習院で学んだ後、学習院大学文学部に進んだが退学。
姉と同じ国際基督教大学に入学し、現在は同大学二年生で、学業優先の日々を送っている。
秋篠宮家の子育ては、男の子も女の子も、分け隔てなく育てる姿勢が一貫している。
悠仁さまが生まれた直後、平成18年11月に行われた記者会見で、宮さまは、
「基本的には長女、次女と同じように接するつもりでおります」と、答えている。
女性皇族の役割についても、「私たち(男性皇族)と同じで社会の要請を受けてそれが良いものであれば、その務めを果たしていく。
そういうことだと思うんですね。これにつきましては、私は女性皇族、男性皇族という違いは全くないと思っております」と、明確に規定している。
平成20年秋の会見で、宮さまは、悠仁さまの教育方針について、
(1)きちんとした社会生活をできるようになってほしい、(2)皇族としての立場も追々自覚する、
(3)自分の関心のあることなどを深めていってくれれば良い、と話したが、
この方針は、眞子さまと佳子さまの子育てにも共通している。加えて紀子さまは、
「年齢に応じて基本的な生活習慣を身につけてもらいたい」と、あいさつや礼儀など、日頃の躾の大切さを強調した。

姉二人とローラースケート
忘れられない光景がある。それはある日の午後のことだった。東京・元赤坂の秋篠宮邸を訪れると、玄関前で子供の声がした。
「え、子供?」「なんで子供がいるのだろう」と、一瞬、私はいぶかしく思い、近付いてよく見ると、声の主は、悠仁さまだった。
その後ろに眞子さまと佳子さまがいた。玄関前の敷地は舗装されており、どうやらみんなでローラースケートを楽しんでいるようだ。
三人はローラースケート靴を履いていた。悠仁さまは、ツーリングの際にも使うようなヘルメットをかぶっていた。
悠仁さまは、大きな声でしゃべり、キャッキャッと姉たちと戯れながら、とても楽しそうだった。
どこから見ても普通の九歳の男の子だった。テレビで見る、少し緊張し、かしこまった様子とは、まったく違った。
素顔の悠仁さまに会って、私は得心した。
しかし、なんといっても、一番、感心したのは二人の姉、眞子さまと佳子さまの面倒見の良さだった。
弟と一緒にいて本当にうれしそうだった。
一般的にみて、二十代の女の子が、一回り以上も年の離れた小学生の弟とローラースケートをして、楽しむだろうか。
同世代の友達と買物や食事をしたり、お茶をしながら彼氏の話で盛り上がっているのではなかろうか。
でも、秋篠宮家は違った。姉の眞子さまと佳子さまは、弟の悠仁さまの面倒を実によくみる。
そして、姉弟はとても仲よしだ。私は、仲の良い三人を偶然、目の当たりにできて、幸運だった。
秋篠宮さまて紀子さまは、悠仁さまや眞子さま、佳子さまが祖父母である天皇、皇后両陛下と会って、触れ合う時間をとても大切に考えている。
天皇陛下は皇太子時代の昭和59年12月の会見で、「皇族は陛下の御心を大切にし、また、国民の望みに沿ってつとめを果たしていくことが大切であり、
それを誠実に行っていくことが帝王学になると思っています」と、述べている。
私は、陛下と直接触れあうことが悠仁さまの成長に大きなプラスになると、信じている。
また、今回の陛下のお気持ちに込められた「天皇の心」を、何よりも悠仁さまに学んでほしいと願ってやまない。


  • 最終更新:2017-01-15 11:43:55

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