天皇陛下の「ご意向」を振りかざす官僚達の危うさ

正論2014年2月号
八木秀次
天皇陛下の「ご意向」を振りかざす官僚達の危うさ
ここのところ、宮内庁が天皇陛下のお気持ちやお考えを披露することが続いている。
私は率直に違和感を感じる。
一つは、国民間でも意見が対立するテーマに陛下のお気持ちやお考えを提示することで、
陛下を政治的対立の渦中にお立たせするかもという懸念。
次に重要な点は、宮内庁の役人やOBが陛下のお考えであると発表してしまえば、
(国民がその真偽を確認する術がないまま)流通してしまう。
陛下の権威を借りて官僚が自分達を正当化する恐れのある、官僚による「天皇の政治利用」である。
オリンピック招致の久子妃出席の時点で、風岡長官より、「苦渋の決断だった」
「両陛下もご案じになっているのではないかと拝察している」と発言があり、
招致決定後には山本次長が、「両陛下が大変お喜びになったと側近から聞いている」と発言。
仮に一時的に陛下がご懸念を示されたとしても、
開催決定の喜びを国民と共にされたという発表だけで十分ではなかったか。
山本太郎手紙手渡し事件で山本に脅迫が届いていた事を心配していらっしゃるの発表も公表する必要があっただろうか。
近年の宮内庁は、皇室の「演出」が稚拙。オモテもオクも官僚によって占められた結果、
表に出さなくていいお気持ちが出たり、官僚に都合よくお気持ちやお考えを披露することが利用される懸念。

ご葬儀と御陵発表への懸念
11月14日に宮内庁が発表した文書は昨年4月に羽毛田長官(当時)が定例会見で発表したものを検討、確定したもの。
今回異例な点は「今後の御陵及び御葬儀のあり方についての天皇皇后両陛下のお気持ち」と題する文書が添えられていたこと。
天皇陛下は国民に負担をかけないように簡素化を望んでいらっしゃるという主旨。
両陛下のお気持ちはありがたく、仁徳天皇を彷彿とさせるが、問題は宮内庁の対応である。
一般にも子供に負担をかけたくないとの思いから自分の葬儀や墓を質素にしてくれという親は多い。
しかしそれを真に受けるのはどうか。
陛下のお気持ちはありがたいが、宮内庁はなぜ、「陛下、それはご心配にはおよびません」と言えないのか。
火葬にすることで経済的負担を軽減出来るという点にも疑問がある。
葬儀には多くの儀式があり、火葬となれば、大幅な見直しが行われる。
懸念するのは、陛下の「簡略化」のご意向をよいことに、儀式の簡略化が行われること。
未確認情報とし葬場殿の儀を新宿御苑でなく、皇居正殿松の間で行うという情報も。図面まで出回っている。
宮中祭祀を「政教分離」を盾にして簡略化を行ってきた。
さらに神道色の希薄化への懸念が。

「ご意向」推測の危険
松崎敏弥氏が「今回の葬送に関する発表で、天皇ご自身が皇室改革について強い覚悟をもっていることがはっきりしました。
女性宮家に向けた皇室改革を進めてほしいという陛下の意思表示だと思います。」と週刊ポストで述べる。
これまでも宮内庁関係者は女性・女系天皇の容認が、女性宮家の創設について陛下のご意向だと触れ回っている。
陛下のお気持ちを持ち出すには慎重の上にも慎重を。
国民統合の象徴であり、特定の立場に立たないことが必要。
宮内庁には「陛下のお気持ち」を持ち出すのはこれを限りにして欲しい。
それが両陛下の尊厳を守る道だからである。

  • 最終更新:2017-06-18 13:18:21

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