中国の尖閣戦略 目的は油田じゃない

WiLL2008年5月号
米議会で分析
中国の尖閣戦略 目的は油田じゃない
古森義久 産経新聞ワシントン駐在編集特別委員

中国問題が世界を揺さぶっている――。
超大国アメリカの首都ワシントンで国際情勢を眺めていると、こんな実感をまともに覚える。
決して誇張ではない。
現にこのアメリカ自体が中国の毒入り食品や医薬品で深刻な被害を受け、
中国製の偽造商品や模造商品に産業界が莫大な打撃を受け、
中国の大軍拡で自国の東アジアでの活動を脅かされ、という事態が激しい勢いで進行しているのだ。 
ここにきて中国当局によるチベットでの僧侶や一般住民の弾圧、
そして虐殺はアメリカの人権意識を鋭く突き、良心をさいなむ。
北京オリンピックをどうすればよいのか、という従来の課題への回答をあらためて迫られる。
中国は政治でも、経済でも、そして軍事でも、既成の秩序を突き崩すような動きをとる。
たとえ、そんな意図がないにしても、膨張するチャイナ・パワーは結果としてアメリカをぐらりとさせ、
国際社会全体をも揺さぶり続ける。
わが日本ももちろんのこと、揺さぶられる側である。
真っ先に揺さぶられる当事国と評してもまちがいではないだろう。
最近の中国製毒ギョーザの事件をみただけでも、日本にとっての「中国問題」がどれほど深刻かは一目瞭然である。
 中国の動きはとにかく世界の現状を変えようとする方向に機能する。
新しく台頭し、膨張する兄弟な国家がもたらす不可避の現象だともいえよう。
中国自身はこの膨張を「平和的発展」と呼び、「既成の国際秩序との調和を図る」と宣する。
しかしこういう言辞が単なる建前であることを思わせる「衣の下のヨロイ」が頻繁に飛び出してくる。
今回のチベットでの大弾圧も、中華人民共和国という独裁専制国家の本質を期せずしてさらけ出した動きだといえよう。

中国の衣の下にはヨロイ
次元は異なるが、最近、アメリカ議会で明るみに出された中国海軍幹部の「太平洋分割管理案」というのも、同様のヨロイのようである。
上院軍事委員会が3月11日に開いた公聴会でみずからも海軍士官出身で海軍長官まで務めたジム・ウェブ議員(民主党)が
中国軍の海上での活動激化を南沙諸島や西沙諸島、さらには尖閣諸島への動きを実例にあげて、指摘し、
それら三諸島への領有権主張は中国の南シナ海や東シナ海での野望を示すのではないか、と質問した。
すると証人として議員たちの質問に答えていたアメリカ軍太平洋軍の海軍大将ティモシー・キーティング司令官は、
きわめて具体的な事例をあげて、中国の覇権志向を明らかにしたのだった。
「中国海軍のある高官が私たちアメリカ海軍の訪中団にごく最近、語ったことがあります。
まじめな顔で次のようなことを告げたのです。『私たち中国海軍が航空母艦を保有するようになれば、
アメリカ側がハワイ以東の海域を管理し、中国がハワイ以西の海域を管理する、という合意を結びましょう』と。
そうすれば、アメリカはハワイ以西に海軍部隊を配備しておかなくてもよいようになるだろう、という趣旨でした。
軍事関連の情報も米中両国でシェアしようという申し出まで、その中国海軍高官は伝えたのでした」
「たとえなかば冗談でも、この発言は中国の人民解放軍が持つ戦略的なビジョンを示しているといえます。
覇権の追求そのものではないにしても、中国軍は明らかに自己の影響力の範囲を拡大したいと意図しているのです。
そうした戦略的目標はアメリカ側にとって、たとえ正面衝突はしないにしても、当然、懸念の対象になります」
もしこの中国海軍高官が述べるように、中国が軍事的にも西太平洋を管理するとなれば、
当然、わが日本も安全保障面では中国の管理下に入ってしまう。
日本に安全保障にとっては、悪夢のようなシナリオである。
その発言がなかば冗談だとしても、まさに衣の下のヨロイがつい露呈された、ということだろう。

これこそが中華思想
実は私自身にも似たような体験があった。
2000年、産経新聞中国総局長として北京に駐在していたころである。
アメリカやヨーロッパには詳しいが、日本にはほとんどかかわりのないという中国人の知識人と
かなり頻繁に会うようになった。中国のある政府関連機関の幹部である。英語の流暢な人物だった。
温厚で博識で親切そうな人だったので、こちらもオープンになり、かなり率直な話し合いをするようになった。
私の北京離任が近づき、その人物とのおそらく最後の会合と思われる一夕のことだった。
夕食をすませた後のくつろいだ歓談のなかで、彼がふっともらした。日中関係の将来について語っていたときである。
「やはり、なんといっても中国と日本とが一つの国になるのが一番、いいですよね」
冗談だか、本気だか、わからない。リラックスしての会話だった。だから私も軽い気持ちですぐ問い返した。
「でも日本と中国では社会も文化も異なるし、言葉もずいぶんと違いますよね。
一つの国になった場合、たとえば言葉はどうすればいいんでしょうかね」
すると、その人物は平然と答えたものだった。
「それはやはり大きなほうの国の言葉を使うことになるでしょう」
この言を聞いたとき、私は彼が決して冗談を述べているのではないと、感じた。
その部分だけは本気だという実感が伝わってきたのだ。
私は内心、ああ、これこそが例の中華思想というものか、と感嘆していた。
さて中国のこの種の国家主権にからむ戦略や思想を真正面から点検する公聴会がアメリカ議会で開かれた。2月27日のことだった。
アメリカ議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」が開催した「国家主権とアクセス支配の方法に関する中国の見解」と題する公聴会だった。
この場で多数の米側の専門家から中国の主権拡大の野望の実態が詳しく紹介された。
この委員会は米中両国間の経済的交流がアメリカの国家安全保障にどんな影響を及ぼすかを調べ、
議会や政府に政策上の勧告をする、という目的で2000年に設置された。
実際には中国の動向を「経済的交流」の枠組みをはるかに越えて、安全保障上の意味合いを探求する。
委員会は12人の中国問題や安全保障問題の専門家で構成される。その顔ぶれは現職の大学教授、
研究所の部長から元政府高官、元上院議員まで、それぞれの分野で知名度や実績の高い有力人物ばかりである。
公聴会は中国とアメリカの安全保障にからむ具体的なテーマを選び、その主題に詳しい証人たちを招いて、
そもそも専門家である委員たちが報告を聞き、質疑応答するという形式をとる。

領土に関しての特殊な概念
この日の公聴会の主題は「中国の国家主権」だった。より具体的には中国が自国の主権をどう防衛し、
どう拡大しようとするか、そしてそのことがアメリカの安全保障にどう影響するか、だった。
公聴会の冒頭で共同議長役を務める二人の委員が問題の提起をした。
中国の国家主権の防衛と拡大の特徴づけだった。
「今回は中国の国家主権に対する見解と、中国が自国主権を保護し、
拡大するために採用する方法について調査します。その方法はいくつかありますが、
軍事力の発展と使用もその有力な一つとなっています。
中国の近年の軍事力の顕著な増強は、その国家主権防衛の能力を大幅に高めています」
(マーク・エスパー委員=元国防次官補代理、フレッド・トムプソン前上院議員国家安全保障顧問)
「中国の国家主権に対する見解はアメリカの見解とも、国際社会との見解とも異なります。
アジアだけでなくグローバルな規模での中国との衝突を避けるためには、
その中国の特殊な見解を知ることが重要となります。とくに中国がグローバルな軍事力発展を継続する現状では、
アメリカが中国に国際基準を順守するよう促すことが肝要となります」
(ジェフリー・フィードラー委員=米国労働総同盟産別会議〔AFL-CIO〕国際部長)
この二人の委員の発言からすでに同公聴会の前提となる問題意識の輪郭が浮かびあがってくる。
つまり中国の国家主権への思考や行動はアメリカその他の諸外国のそれとは異なり、
しかも主権の発揚や拡大にはたぶんに軍事手段が用いられる、という認識である。
この認識は公聴会の同じ冒頭で発言したキャロリン・バーソロミュー委員(元下院議長首席補佐官)の言葉でもさらに明確にされていた。
「この公聴会では中国政府の国家主権の概念について調査をするわけですが、この点での中国の概念が、
アメリカ側が理解する国際法の解釈とは食い違っています。
そしてその相違は中国とそのアジアの近隣諸国との領有権紛争の原因ともなっています」
国家主権といえば、まずだれもが思いつく主要な構成要因は領土保全だろう。
主権国家は固有の領土があってこそ成り立つ。どの国家にとっても、
自国の領土への権利をどう解釈するかが死活的な重要性を持つのは自然である。
この場合の領土とはもちろん領海や領空も含まれる。
バーソロミュー委員の発言は中国が主権への特殊な概念の一部として自国の領土に関しても
特殊な概念を有しているからこそ、近隣諸国との領土紛争が起きるのだと示唆しているのだ。

野心のために国際法を無視
中国の主権概念の特殊性と日中両国間の領土紛争に関しては証人の一員の
ジューン・ドレイヤー氏(マイアミ大学教授)の発言も注目に値する。
この発言は前述の二委員の問題提起からしばらく後に述べられた。この公聴会は午前9時から午後5時までと、
一日中続くため、委員の発言も証人の証言も、膨大な量になるのである。
「中国の国家主権の考え方のなかでも、とくに海洋法や宇宙使用に関連しての見解は過去20年間、
注目を集めてきました。1992年には中国の全人代は領有権が争われている南沙諸島、西沙諸島、台湾、
尖閣諸島を含む多様な地域の主権を一方的に宣言する『法』を成立させました。
この『領海法』はこうした紛争地域を含む海域を中国領海と勝手にみなし、
人民解放軍がその『領海』を防衛する権利をも主張しています」
要するに中国はこと主権の主張、その象徴としての領海や領土への主張の主権となると、国際法は無視して、
自国独自の「法」を打ち出し、その履行には軍事力の行使をも辞さない、というのである。
中国側のこうした特徴は東シナ海での領土や権益を中国と争う日本にとってはとくに頭に刻みこんでおくことが欠かせないだろう。
この日本へのからみという点で、とくに注視されたのは
日中両国間で主張が対立する東シナ海でのガス田開発の案件と、尖閣諸島の領有権の案件に対する
中国側の姿勢についての米海軍大学「中国海事研究所」のピーター・ダットン教授が述べた考察だった。
ダットン氏は肩書きどおり、海軍の研究機関に所属して、中国の海洋戦略、海軍戦略を専門に研究する学者である。
これまでも日中両国の東シナ海での海事紛争などについてこの種の公式の場で何度か証言してきた。
今回は「軍事的手段で国家主権を拡張する中国の手法」というセッションの証人として登場した。
ダットン教授の証言も中国がこと領土の保全や拡張となると、国際法にも背を向け、
軍事力の行使をも辞さずという態度で対処してくる、という「中国的特徴」を提示していた。
同教授は総括としてまず以下のように述べた。
「中国は沿岸諸国と国際社会との海事権の伝統的なバランスを根本から覆そうと意図しています。
とくに排他的経済水域(EEZ)に関する従来のバランスを変えようとしているのです。
中国はそのために自国の海域周辺の主権を強化し、さらに拡大しようと狙っています」
排他的経済水域とは周知のように、沿岸から200海里の水域で、沿岸国に生物・非生物の資源の探査や開発に関する
主権的な権利が認められるという概念である。国際的に認められた原則ともいえる。
だが中国はこの原則や概念にチャレンジしているというのがダットン教授の考察の前提なのである。 

中国は日本との対決を管理
そして同教授は中国のこうした基本姿勢の実例として東シナ海での日本との領有権紛争について証言するのだが、
その前に興味あることを述べた。
「中国は南シナ海での領有権紛争では他の当事国に対して、原則は譲らなくても、
わりに協力的なアプローチをみせています。しかし東シナ海での日本との紛争では
まったく対照的な対決の姿勢をとっているのです。ただし管理された対決とでも呼ぶべき姿勢です」
中国は日本に対してだけはとくに非妥協的な厳しい姿勢をとっていると証言するのだ。
そして次のように説明するのだった。
「中国側指導者はごく最近は表面的には日本に対して、わりに友好的にみえる態度を示しているけれども、
こと領有権紛争となると、日本との争いを実際に解決してしまうことは
中国にとって好ましい事態ではないとみなしているようです。
東シナ海での自然資源、境界線、国家主権などをめぐる日中両国間の緊張、とくに尖閣諸島を日本が統治し、
その領有権を主張していることをめぐる日中対決は中国政府にとっては
自国側のナショナリズムを支える強いテコとなります。
中国政府はそうしたナショナリズムの高まりをうまく使って、自国民の関心を内政の難題からそらし、
共産党政権への支持を強めることができるでしょう」
東シナ海での領土争いも中国側は実は自国内の民族意識の高揚に利用しているのだ、という見方である。
だから中国側の日本との対決は「管理された対決」というわけである。
要するに、中国政府は東シナ海の排他的経済水域の線引き争いや、
中国側が「釣魚島」と呼ぶ尖閣諸島の領有権争いに対して、そもそも日本側との間で妥協をして、
紛争を解決する意図がまったくない、という考察なのだ。だとすれば、日本側の「譲歩」とか「妥協」とか
「友好的姿勢」などという概念ははじめからまるで不毛だということになる。
「ガス田の日中共同開発」という発想も、言葉だけの域を出ないこととなる。
そうであれば日本にとっては重大な事態である。
出発点から基本の構図や原則を完全に誤認していたことにもなってしまう。

ナショナリズムのための争い
ダットン教授はさらに証言した。
「中国指導者にとって自国民のナショナリズム感情を強化したいと思えば、
いつでもとにかく東シナ海での日本との領有権争いに注意を喚起さえすればよいのです。
その結果、つい数十年前まで中国領土の主要部分を日本が占領していた事実を
中国人民に想起させることができるのです。この過去の日本の侵略の想起は、
中国の領海権主張への現在の日本の侵害への断固たる反発と合わせて、中国政府が外国勢力に屈し、
恥辱を味あわさせられることはもう二度とないことを自国民に誇示する効果を生みます」
まさに自国民に強い民族意識をあおるための「日本カード」である。
日本との領有権紛争カードと呼べば、さらに正確だろう。 
ダットン教授は中国のこの戦略にはさらに巧妙な二面性があることを指摘する。
前述の南シナ海と東シナ海との対応の相違である。
「中国政府は南シナ海での領有権紛争では他の当事国に対しわりに協力的な姿勢で交渉を進めるのに対し、
東シナ海では日本に対し一定の抑制を効かせたうえでの対決の姿勢を崩そうとしません。
中国はこの使い分けによって、自国内の安定と周辺地域での台頭の両方に寄与する形で、
国内向け政治メッセージと地域向け政治メッセージのバランスをとろうとしています」
つまり日本に対して強硬な対決の姿勢をとれば、中国の国内の安定には役立つ。
一方、南シナ海で領土紛争の相手となるベトナム、フィリピン、インドネシア、マレーシアなどという諸国に
協力的な姿勢をみせれば、東南アジア地域での中国の外交得点となる。
ダットン教授はこんな意味を述べているのである。
中国は日本に対しては東シナ海での領有権紛争も資源紛争も本当は解決しようという意図はない。
いつまでも日本と対決したままにあることが自国民の政府への支持を保持するのは得策だからだ。
こんな意味でもあろう。何度も書くように、そうだとすれば、日本政府のこれまでの対応は根本から間違っていた、ということにもなりかねない。
ダットン教授はその所属の米海軍「中国海事研究所」という機関の名称が示すように、中国が自国の主権や軍事に始まり、
海上、海洋にからむ諸問題に対しどのような政策を保ってきたかを体系的に研究してきた専門家である。

東シナ海は対日戦略の道具
ダットン教授は中国の日本への対決について、その「管理された」部分にも言及していた。
「中国は東シナ海での日本との海上境界線をめぐる紛争で断固たる対決の姿勢をとりながらも、
なお当面はその対決が暴走して、実際の軍事衝突などに発展することは避けたいとしているようです。
ただし台湾に対して中国が主張する主権が深刻に脅かされた場合だけは、東シナ海の領有権を軍事力を使ってでも、
全面的にコントロールしようとするでしょう。それ以外は日本との東シナ海での対決は
あくまで一定期間内で管理をして、外交と軍事の両方の要素を混ぜた対日戦略の道具としておくでしょう」
だからこそ、あくまで「管理された対決」なのである。
そうなると、日本側が「胡錦濤国家主席の来日までには東シナ海のガス田をめぐる紛争を解決し、
日中共同開発の合意を成立させる」などと主張することがいかにも無益にみえてくる。
中国側はそもそも問題の解決への意思がないとされるからだ。
ダットン教授のこうした一連の考察の証言に対して、「米中経済安保調査委員会」の委員側からきわめて具体的な質問が出た。
質問者は第一次ブッシュ政権で東アジア担当の国防次官補代理を務めたピーター・ブルックス氏だった。
「中国が東シナ海のEEZ(排他的経済水域)の線引きの問題で強い主張を崩さないのは、
まず第一にはエネルギー資源の確保、つまりガスの最大限の確保が理由だからではないのですか」
ダットン教授はこの質問に「ノー」と答えたのだった。
「いや中国当局がエネルギー資源の確保を最大限、優先するのであれば、
もう何年も前に日本との間でEEZの主張の食い違いを解決して、ガス田開発の共同事業を進めていたでしょう。
エネルギー獲得が優先ではないと思います」
中国政府にとっては国家主権の発動としての政治的な主張による「対決」の維持こそが真の目的だと示唆する発言だった。

軍事力行使も辞さない
ダットン教授はガス田については質疑応答で次のような発言もした。
「日本政府側は小泉政権時代に、もし日中共同開発のための対中交渉に進展がなければ、
日本独自でも開発を進めると言明したことがあります。中国側はそれに対し、
『そうした行動は戦争行為とみなし、軍艦をすぐに送りこむ』と威嚇しました。
この反応は中国が領土紛争に対しては国家主権の発動として軍事力行使の可能性をも
常に排除はしていないという基本姿勢の表れだといえるでしょう」
つまり中国は「管理された対決」だとして紛争の暴走を抑制する一方、
最悪の事態では軍事力の行使も辞さないという可能性を残しておく、ということなのだろう。
東シナ海に関しては中国はそもそもその大部分が中国の領域だという見解をとってきた。
いわゆる大陸棚延長の領海論である。つまり中国大陸から海底に延びる大陸棚は沖縄近海にまで続くから、
沖縄近海までが実は中国の領海だとする主張なのだ。
この点についてもダットン教授は証言の書面部分で明確な反駁を述べていた。以下の趣旨だった。

▽中国当局は「東シナ海の海底の大陸棚は長江や黄河から流れ込んだ沈泥の堆積だ」と主張するが、
そんな堆積が起きたのは氷河時代の現象であり、いまの世界でそんな主張をする国は他にまず存在しない。
尖閣諸島に対する中国の主張に対しても、ダットン教授は以下の趣旨の意見を表明した。
▽この島の存在を認める中国側の文書の記録は明時代からあったが、
中国側による同島の実効統治の証拠はまったくない。合法的な領有権主張にはこの実効統治の存在が根拠となる。
ダットン教授はここでも結果として日本側の主張に軍配を上げるような見解を明らかにしているのだった。

軍事力の政治利用も
同教授が証言をした同公聴会の同じ「軍事的手段で国家主権を拡張する中国の手法:というセッションで
さらに証人として登場したのは、アジアの安全保障や中国の軍事動向の研究で知られる
ロイ・カンファウセン氏だった。現在の肩書きは「全米アジア研究部会」(NBR)の政治・安全保障部長である。
カンファウセン氏も中国が東シナ海、南シナ海、台湾海峡などでの国家主権の発動での軍事力利用について
証言していた。つまり自国の領有権の主張を効果的に進めるための軍事力の使用である。
このことは実際に軍事攻撃に走り、軍事衝突をするというのではなく、
その前段階での軍事力の政治利用ともいえよう。その目的は領土紛争で優位に立つことである。
同氏はこの軍事力利用を四種類の具体的なパターンに分けていた。
〔存在〕東アジアで海軍部隊の存在を誇示することで、通常は二、三隻の小艦隊で対象海域を航行する。
その存在が相手国への心理的圧力となる。
実例としては2007年12月の中国軍艦の東京湾への初めての寄航があげられる。
〔空からの偵察〕中国軍の戦闘機などが相手国の領空に接近、あるいは侵入し、実力を示す。
最近は日本領空hwの中国偵察機の侵入が急増した。台湾海峡の中間線を越える中国機の飛行も毎日、4、5回にまで増えた。
〔潜水艦の巡航〕近年、急速に増強された中国海軍の潜水艦群が公海や紛争海域の航海を増やす。
搭載の巡航ミサイルや弾道ミサイルの性能の向上が領有権紛争の相手側に威圧を与える。
2004年11月には中国の「漢」級潜水艦が日本領海に侵入した。
2006年10月には「宋」級潜水艦が米空母キティホークの至近海域に突如、浮上した。
〔水上艦艇〕中国は紛争水域での海軍水上艦の航行を増加させている。
東シナ海での日中競合の海域でとくにその航行が目立つ。
2005年9月には中国は自国が開発する「春暁ガス田」海域にソブレメンヌイ級誘導ミサイル搭載駆逐艦など
5隻を出動させ、日本側へのメッセージを送った。
こういう動きもダットン教授が「管理された対決」と定義づけた中国の日本側に対する領有権紛争での
アプローチの枢要部分だといえる。中国はまさに多種多様な方法で日本に対し領有権紛争を挑んでいるのである。
アメリカ議会でのこの公聴会はそんな厳しい現実をいやというほど明らかにしたのだった。

  • 最終更新:2017-01-16 20:56:55

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