両陛下、思い出の品々に弾む会話

(皇族方の素顔)両陛下、思い出の品々に弾む会話
宮内庁担当 中田絢子、島康彦
2014年11月22日01時25分

三つのエプロンの前で、天皇、皇后両陛下が足を止めました。
幼稚園時代の皇太子さま、秋篠宮さま、黒田清子さん(紀宮さま)が皇后さまのために絵を描いたエプロンです。
皇太子さまはオレンジ色などで乗り物のような絵を、
秋篠宮さまは元気いっぱいに暴れ回っている怪獣のような絵を、黒田さんは色とりどりの草花の絵を。
それぞれの個性あふれる作品を前に、両陛下からは「ふふふ」と笑い声が聞かれました。
皇后さまは「みんなそれぞれで」と話し、黒田さんのエプロンについて「ポケットだけ後で縫い付けたの」と振り返っていました。

10月22日、両陛下は東京中央区の日本橋高島屋で開催されていた特別展「天皇皇后両陛下の80年―信頼の絆をひろげて」を鑑賞されました。
皇后美智子さまが10月20日に80歳の誕生日を迎え、両陛下そろって80歳の傘寿の節目となったことを記念したものです。
宮内庁侍従職監修のもと、これまでの歩みを約170点の写真、初公開を含む約130点のゆかりの品々で振り返る内容で、
両陛下が国民やご家族、海外の国々などと結んできた絆をたどるものでした。

両陛下はまず、1階フロアで、皇后さまがお住まいの御所で演奏していたハープや、ピアノなどを鑑賞しました。
その後、8階の展示フロアに移動し、場内をめぐりました。
お二人が育った過程を紹介するコーナーでは、学習院初等科時代に天皇陛下が背負っていたランドセルや、
自身の書道作品「平和國家建設」などが紹介されていました。
皇后さまはランドセルを前に「かわいいランドセルが残っていましたね」と目を細めたそうです。

「ウミモノガタリ」と題された図画は、1941(昭和16)年に天皇陛下が書かれた図画。
魚に吹き出しがついた絵が書かれた4枚の図画で、
天皇陛下は「あれはマイルカかな」「イルカも好きだったんだね」などと皇后さまに紹介していました。
他の展覧会では、関係者からの説明にじっくり耳を傾けることが多い天皇陛下ですが、
今回は自ら皇后さまにこまごまと説明され、それは心温まる様子でした。
案内した関係者によると、魚類学者の顔も持つ天皇陛下は、
当時から魚が好きだったことや、クジラの百科事典をよく見ていたことなどを皇后さまに説明されたそうです。

皇后さまの歩みをたどる展示では、聖心女子大時代に取得した中学、高校の英語の教員免許も並び、
天皇陛下はめがねをかけてじっくりと見入っていました。

皇后さまが教員免許を取得していたことはあまり知られていません。
ただ、当時皇后さまは必ずしも教員の道に進もうとしたわけではないそうです。
側近によると、教職課程に興味がある授業があったこと、
将来何か役に立つ場合があるかもしれないとも思ったことが主な理由だったそうです。
教育実習についても、とてもいい経験として記憶されていると聞きました。

聖心女子学院高等科1年の皇后さまが、リレーの第1走者として順番を待つ写真もありました。
天皇陛下が満面の笑みで「聖心の記録に?」と言いかけると、
皇后さまが珍しく何度も首を振られ、「走ることだけが好きで」と控えめにお答えになる場面もありました。

天皇、皇后両陛下の出会いの場として知られる長野・軽井沢でのテニストーナメント。
1957(昭和32)年の夏のことです。なんとのその際の対戦表が残されており、
パネルとして展示されました。両陛下は別々のパートナーとともに、ダブルスのトーナメントに出場。
それぞれ勝ち上がって4回戦で対戦しました。
皇后さまと外国人少年のペアは、2時間近くにも及ぶ熱戦の末、天皇陛下のペアから勝利を挙げました。

両陛下はパネルを感慨深そうに見つめ、皇后さまは「1回戦で消えるはずでしたもの」などとつぶやきました。おそらくご自身のことでしょう。
皇后さまの言葉からも、両陛下の出会いが全くの偶然だったことを改めて感じました。

両陛下の互いへの贈り物も公開されました。金色に輝くトレド細工の小さなブローチ。
これは、天皇陛下が結婚の発表日に皇后さまに贈ったもので、初めて公開されました。
天皇陛下は1953(昭和28)年、19歳で欧米を訪問された際、
スペインで母・香淳皇后、妹君、そして未来の妻のために三つのブローチを買い求めたそうです。
昭和の時代のご一家の記者会見録を皇室記者がまとめた「新天皇家の自画像 記者会見全記録」によると、
皇后さまは1984(昭和59)年、ご結婚25周年に際した会見で、思い出の品として、
昭和天皇からの小鳥のブローチや、お子さま方からの手作りの品などとともに、
このブローチを挙げています。同書には、どういうものかという記者の問いかけに、
天皇陛下が「今日それをつけてくればよかったのに」とおっしゃり、
一同の笑いの中で皇后さまが「大事にしまってあります」と話されたことが記されています。
この特別展、高島屋日本橋店ではすでに終了していますが、
来年1月21日~2月2日、京都高島屋でも開かれるそうです。


「みなさまにサプライズがあります」。そう紹介され、テントの中から姿を見せたのは、
天皇、皇后両陛下でした。周囲から拍手と歓声がわきあがり、腕を組んだ両陛下は実にうれしそうでした。

10月21日の昼下がり、皇居・東御苑で開かれた皇宮警察音楽隊ランチタイムコンサートでの出来事です。
この前日は、皇后さま80歳の誕生日。昨年12月に天皇陛下は80歳の誕生日を迎えており、
お二人の傘寿を祝福する曲目が用意されました。天皇陛下はスーツ姿。
皇后さまはチェックのロングスカート姿。最前列の席で、集まった350人の観客と演奏に聴き入りました。

1曲目は、東京オリンピックのファンファーレ。1964(昭和39)年10月10日、
皇太子ご夫妻時代の両陛下も出席した開会式で披露された曲です。
4人の音楽隊員が当時使われたトランペットを演奏。高揚感を誘う高らかな音色に、両陛下は盛んに拍手を送っていました。

2曲目は「歌声の響(ひびき)」。両陛下が思いを寄せるハンセン病の国立療養所「沖縄愛楽園」(沖縄県名護市)に贈った曲です。
1975(昭和50)年、両陛下が同園を訪問した際、
療養所の人たちが「だんじゅかりゆし」(旅行きを祝う沖縄の歌)を歌ってお二人を見送りました。
その思い出を、天皇陛下が沖縄の短歌「琉歌」に詠み、皇后さまが曲を付けました。
1999年4月、皇居内の音楽ホール「桃華楽堂」で開かれた
両陛下の結婚40周年「ルビー婚」を祝う音楽会でも、メゾソプラノの永井和子さんが熱唱しました。

今回のランチタイムコンサートでは、「琉装(りゅうそう)」と呼ばれる沖縄の伝統衣装をまとった男性が
三線(さんしん)を演奏しました。皇宮巡査の高橋弘治さん(30)。
琉球大学に入学後、三線を学び始め、沖縄でのコンクールでグランプリを獲得したという腕前。
独特の響きに合わせ、皇宮警察学校の学生たちが歌いました。

次が「祝典行進曲」。両陛下の結婚を祝して作られた曲で、
1959(昭和34)年4月の結婚パレードで披露されました。熊本県の民謡「五木の子守歌」と続きました。

そして、予定曲の最後が、東日本大震災の復興支援ソング「花は咲く」でした。
司会から観客も一緒に歌うよう呼びかけられると、両陛下も歌詞が書かれた紙を見ながら口ずさんでいました。
特に皇后さまは口を大きく開けて歌っていましたが、記者席は離れていて残念ながら歌声を聞くことはできませんでした。
アンコール曲の「365歩のマーチ」で、両陛下は演奏に合わせて手拍子をしていました。

演奏終了後、両陛下は音楽隊の渡辺浩二楽長(53)に近づいて声をかけました。
渡辺楽長によると、天皇陛下は「懐かしい思い出がある曲を演奏してくれてありがとう」、
皇后さまは「本当にありがとう。隊員のみなさまによろしく」と話したそうです。

両陛下は続いて、三線を演奏した高橋巡査にも「今日は本当にありがとう」
「今後も頑張ってください」とねぎらいました。
高橋巡査は取材に「緊張して頭が真っ白になりました」と感想を話してくれました。
(宮内庁担当 中田絢子、島康彦)
http:// www.asahi.com/articles/ASGBQ4RXMGBQUTIL020.html?ref=wmailm_1128_12

  • 最終更新:2017-04-15 15:51:18

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